2026.06.16カブちゃんの北の便り「阿寒湖編」

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カブちゃんの北の便り「阿寒湖編」

2026.06.17 小甲 芳信
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カブちゃんの北の便り「阿寒湖編」

フィールドの様子

これは昨年初夏のエピソードです。
ボクが初めて訪れた阿寒湖で釣れた、アメマスへの攻略方です。
ただし、これはほんの1つの釣り方でしかありませんから、全てのシーンで通用するワケではないですが、どうかビギナーの方々への一助になればと思います。
それでは本編へ・・・・

『初めての阿寒湖』
2025年6月の終わりに、ボクが初めて訪れた阿寒湖は想像以上に荘厳で美しい自然に包まれていました。20代の頃からその素晴らしさは多くの友人から聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。

ボクが最初に阿寒湖を意識したのは、当時故・西山徹氏が『モンカゲロウが羽化する日』というビデオを見てからでした。そのビデオで紹介していた、モンカゲロウのマッチザハッチを意識したアメマス釣りの映像を見てからで「いつかは自分も!」と意気込み、繰り返し繰り返し見ていたものです。ですが、仕事柄長い休みが取れなくて、昔から憧れていた湖へ辿り着くまでに30年以上もの時間が経ってしまいました。

そして昨年6月、函館に住む阿寒湖を知り尽くしている根っからの阿寒フリークな友人を半ば無理矢理誘い、また阿寒近郊に住む友人にも声を掛けて、お互いが顔を合わすのも久しぶりとなる同窓会のような釣り旅へと走り出しました。

一路函館を出発したものの、エアコンが壊れていてオヤジ臭が充満する暑い車内。
ムサ苦しいオッサン2人が隣り合わせていても心はウキウキです。オヤジアブラ?加齢臭?そんなものはぜんぜん気になりません。だって、目を閉じれば目の前には黄色い帆掛け船のようなモンカゲロウが無数に浮かんでいて、それはまるでサイダーの泡のように一面で弾けるスプラッシュライズが起こるんだと思い込んでいました・・・・

『裏切られた期待と妄想』
長い長い高速を経て、更にはヒグマやエゾシカが闊歩する広大な森を抜けると、そこには蝦夷露(エゾツユ)に咽ぶ神秘的な水をたたえた阿寒湖がボクらを出迎えてくれました。

フィールドの様子

そして、さっそくの情報収集とばかりに、友人が昔からお世話になっている漁協の方へご挨拶がてら伺ってみると、開口一番「ダメダメ、食性が変わって今は食ってるのはワカサギだけなのサ」「モンカゲなんて、ぜんぜんハッチもないしね」とのこと。

いきなり後頭部をハンマーでガツン!とヤラレた気分でした。モンカゲロウのライズを心待ちにしていた浦島太郎は、もはやピラミッドに埋葬されたクフ王のごとく沈黙せざる得なかったのです。フライボックスに並べた様々なモンカゲロウパターンはもはや特級呪物と化し、翌日からの釣りには色濃い暗雲が立ち込めてしまいました。その日、とりあえずホテルや渡しボートの店舗で販売していた『ドライワカサギ』を手にしてはみたものの、何故だか買う気にはなれずに明日からの釣りを思い早々に眠りについたのです。

『出迎えてくれたワカサギの群れ』
翌朝、幾ばくかの緊張感を抱えて船着き場へ来たものの、ピカ天無風と不安要素しか見当たらない中で「まぁ、それなりのパターンを引っ張ってれば、ボウズはないでしょ!」とは、阿寒湖エキスパートの弁。一方の阿寒湖ド素人のボクとしては、もはや不安なのか諦めなのか分からない心境で、目の前に見える周囲300メートルほどの小さな島『ヤイタイ島』を目指し船へと乗り込んだのです。

フィールドの様子(TIEMCO阿寒湖ツアー時の写真)

島の桟橋に着き、朝イチの夜明けと共に桟橋の反対側でマラブー系を引っ張る友人の背中からは、まるで目にみえるような業火がメラメラと燃え盛っています。竿先にぶら下がるマラブーまでもが丸コゲになってしまわないか心配になるほどです。

そんな友人の意気込みに尻込みしたボクは、ひとまずこの島に鎮座している鳥居をくぐり神社への参拝を終えてから、おずおずと湖面へ入っていきました。されど、人一倍フライをぶっ飛ばすのはなにより苦手分野。明確なポイントが見出だせない逆光下での水面では、30分と集中力を保てずに、もはや「今日はピクニックに来たんだ」と、早々に見切りを付けることに。

フィールドの様子

そしてコーヒーブレイクを取ろうと、地元の友人と二人で島の桟橋側へ戻ったのが功を奏すことになるとは・・・・

そこは目の前が急深な掛け上がりとなっていて、朝日に照らされた湖面からは僅かに残った朝霧が立ち上っています。

「カブちゃん、ワカサギの群れがスゲーいるっ!!」
「あっ!」
「アメマスも着いてるわ!」

フィールドの様子

さすが地元エキスパートです。闇雲に釣り始めて場を荒らすことなく、まずは状況分析を怠りません。コーヒーセットを放り投げて慌てて近寄ってみれば、そこにはおびただしい数のワカサギがクルージングしていました。

時折「ドキリ!」とさせられる大きさの巨鯉に驚きながらも水中の様子を観察していると、群れの規模の大小はあれどワカサギスクールが泳ぎ去るその後ろを、一段下のやや深い水深でゆっくりと追尾するアメマスも確認できました。さほど大きい個体群ではなかったのですが、明らかにワカサギを意識しているのは容易に見て取れます。
しかし、ここで一切のボイルやスプラッシュが起きないのは単純に時合いではなかったのでしょう。

コレ、海ではよく同じようなシチュエーションがあって、カタクチイワシなどの群れに青物や他の回遊魚が付かず離れずで追尾していることがあります(だいたいベイトの泳ぐタナの一段下)。これは、捕食者側がある程度飢えから解放されている状態である場合が多く、たまに被食者(イワシなどのベイト)が何らかの拍子にケガや瀕死の状態で群れからヒラヒラと落ちてくるのを見付けては「パクリ」とついばむぐらい。

マッチング・ザ・ハッチを意識されている方ならたぶんスグご理解頂けると思いますが、例えばカディスのハッチとそれに伴うライズに出会い、そこでライズしていた魚は実はアダルトではなくて水面直下のピューパだけを偏食していたり、はたまた、おびただしいヒラタの流下の中でスペントだけを選んでライズしていた魚だったり。まぁ細かい所は大きな違いがあるにせよ、大雑把に言えばそれらに近い状況と思って下さい。

そして実はこのような状況は意外と厄介で、積極的には捕食行動を起こさないので、仮に朝イチの良い時間帯であったとしても目の前にルアーやフライを入れてリトリーブしても“チラ見”で終わってしまう場合が多いのです。逆に腹が減っていれば、有無を言わずに獲物に襲い掛かり現場はボイル祭りとなるので、割りとイージーモードで釣れるのです。
※原因としては、捕食者側の空腹度合いの他に、時間帯による干潮・満潮や気圧、そしてそれらに伴う潮流・水流などが挙げられます。

『フィッシュイーター化した阿寒湖アメマスへのシステム』
さて、そんな海でのシーンを思い出していたボクは、相手が目の前のバンクに沿って回遊していることと、手の届かないほど深いレンジを泳いでいないことを確認して、以前『カブちゃんの北便り・ブリ』でお伝えしたように、フライのタナを合わせ且つ瀕死のワカサギを演出できるように、アメマスのタナよりもやや高い位置にフライが届くようインジケータを装着し小さなガン玉を2つ、フライからうんと離れた60㎝~70㎝ぐらいの所へセットしました。

※この場合、2つのガン玉の間隔を広げ(20センチぐらい)てセットすると、沈下速度は遅くなります。逆に、ガン玉同士の間隔を無くしてくっ付けるように装着すると、沈下速度は早くなります。

そしてこのようなシステムですから、リーダーやティペットは1xと多少太くても問題ないことと、ポイントを荒らさないよう素早いファイトで魚を寄せられることを優先させ太糸をセレクトしました。そしてそして、こんなシチュエーションでセレクトしたフライパターンは、フォール中にフライのシルエットを崩さないパターンとしてかなりのオーバーサイズではあったのですが海アメマスの釣りでも紹介させて頂いた“サケ稚魚パターン”をセレクト。

▼YouTube TMC Fly Tying Room Vol.36 サケチー(鮭稚魚フライ)はこちら

パッと見は、目の前を泳ぐワカサギの倍以上のフライサイズでしたが、イメージとしては前述したように力尽きてヒラヒラと群れから落ちていく個体を演出することが第一。

『アプローチのコツ』
フライを結び、ワカサギが近づいてくるのを確認したボクは水際から2歩下がり、ワカサギがボクの影に怯えないよう身を屈めながら静かにキャストしました。この時は、出来るだけラインとフライが「ピン」と伸びきった状態になるよう気を配ります。それは、ライン(リーダーとティペット)にスラッグを作りフライが垂直に落ちていくとフライは沈下速度が僅かに早くなり、コチラが思っているように「ヒラヒラ」とヒラを打って(左右に揺れて)沈むとは限らないのです。一方、ラインを直線的にした状態での沈下は、ティペットを引き込みながら沈下するのでややゆっくりと沈み、また姿勢も安定するのです。この“ゆっくり沈める”のが、回遊しているアメマスへのモーレツなアピールになります。

フィールドの様子(瀕死状態のワカサギ)

そして、アメマスがフライを目視できそうな距離まで近いたら、ロッドティップを1~2秒だけシェイクします。それは、ティップの先が左右に20㎝~25㎝ほど揺れるぐらいで十分です。こうすることで、水中のフライは「ピクピク」と微細な震えを見せながら僅かに水面へと浮く動作をします。この“誘い”ができたら、あとはフッキングのための心の準備をするだけです。

『歓喜の祭り』

フィールドの様子
フィールドの様子

ボクらが1匹目のアメマスをランディングしたその後は、裏側で頑張る友人を呼び、メンバー皆で釣っては笑って話し合い、話しては釣るを繰り返して阿寒湖の大自然に包まれていました。この日、恐らくはフライのサイズをワカサギのリアルサイズに近づけられたなら、もっともっと多くの魚をキャッチできたと思われます。でも、それぐらい“マッチ・ザ・シチュエーション”を演出することで魚を釣ることもできるのです。

過去には「フライは合っているのに、釣れないのは何故?!」と、思われた方も多くいらっしゃると思います。そんな時には、少しだけフライパターンなどの他にも“現場のシチュエーション”に気を配って、いかに魚が望むシーンを演出してやれるか?がキーになることもあるのです。

フィールドの様子

『まとめ』

もう一度、お伝えします。キャスティング、プレゼンテーション、フライパターン、それらももちろん重要ですが、それらを生かす為にもシチュエーションの演出が大事なことも忘れないで下さい。

例:ワカサギが群れてる。
ワカサギが岸際から離れない。
(外敵が近くにいるから、危険を感じ浅瀬から離れない行動パターン)
ボイルがない。
でも、確実にアメマスは目の前にいる。
そんな時、インジケータを使ってタナを合わせ、魚に反応させるのも一つの手立てです。

これらは、決してモンスタークラスのアメマスや、70センチに迫るニジマスなどを狙えるほど特別な何かを持ったタクティクスではないのですが、今はまだノーフィッシュに悩む方の助けになればと思っています。

そして、この釣り旅の一番のハイライトは、ワケあって久しぶりに釣竿を握った友人が
「カブちゃん、釣り楽しいね?」
「いやぁ、釣り楽しいわぁー!」
と、眩しい笑顔で応えてくれたこと。
その言葉を聞けただけで片道530㎞強を走った甲斐がありました!

さてさて、今はまだシーズンが始まったばかりです。これからも何か楽しい釣りに出会えたら、お便りさせて頂きます。なお、阿寒湖の多くのエリアでヒグマの出没が頻繁に確認されていますので、どうか『熊一目散』などの装備をお忘れなく!!

それでは皆さんどうかご安全に!!

フィールドの様子

※アドバイス

『ガン玉の間隔』
以前のお便りの『スカッディーウィーク』でもお伝えしたように、魚が近距離でしか確認出来ない場合(アプローチに費やす時間が極端に短い)、数秒間で急激に沈めたいのでガン玉の間隔を無くしてセットします。または、川の流速がある場合なども魚が定位するピンポイントへ素早く届ける為に並べてセットします。

一方で、水深が浅く流速が緩やかなポイントを攻める時や、魚へフライをゆっくりとアピールしたい時には、ガン玉の間隔をあけてセットすることで沈下が遅くなり、時間稼ぎができるのです。

『タイイング』
自宅へ戻ってから、当日の様子を思い浮かべながらサイズを合わせたワカサギのパターンを巻いてみました。手順は、前述したURLと同じで、マテリアルが少々異なるぐらい。

フックは、フライのバランスやフッキングを鑑みてもTMC201Rの10番~8番や、TMC760の10番~8番がオススメです(画像は201Rの10番)。そしてフレームとなるスーパーヘアーは、ファイバーを3本だけで十分です。その3本を6つ折りにして使います。フライの全長は4㎝ぐらいがリアルサイズに近いと思います。

フィールドの様子

そして、ボディーマテリアルはサケチーの時と同様のエンジェルヘアー/ホロシルバーでしたが、ワカサギの場合はパールホワイトなどでも良いかもしれません。そしてこのフライは華奢な構造ですから、何匹も釣れる耐久性を持ち合わせていません。ですから、できるだけ多くのスペアを巻き貯めてから湖面へとアプローチしてみて下さい。

フィールドの様子

それでは皆さん、事故には十分お気を付けて、阿寒湖の特産品『金アメ』をたくさん釣り上げて下さいね!